勇気づけの方法 ⑥「アドラーが目指した話し合う育児(前編)」
育児に取り組むときには2つの大事な要素があります。一つは何を目指すか(目標)、もう一つがそのためにどんな方法を使うか(手段)です。これらを明確にしている点がアドラー心理学の特徴です。そのうち目標は、「相互尊敬、相互信頼、協力、目標の一致」の4つにまとめられています。分かりやすく、「自立と社会性」と説明することもあります。
これらの目標に対して手段(方法)があります。アドラーはこの時意識していたのはそれまで伝統的に行われてきていた権威的な育児方法でした。これは彼の住んでいたオーストリアだけでなく世界的にももそうでした。彼がこの権威的な育児について危機感を持った重要な理由が、彼が生きていた時代背景があります。その中で最も大きなものが、その時に起こったロシア革命でした。ロシア革命の様子は彼の妻のライサから逐次耳に入ってきました。そして、革命の指導者が行った市民に対する残酷な行動から、知識人が最後の希望としていた共産主義も頭にどんな理想があってでも、人間が権威を手に入れた途端にだめになることを悟ったのでした。
アドラーはこの時から新しい育児方法について語り始めます。目的論を骨格としたアドラー心理学(個人心理学)はこのような背景をもっています。