価値と雰囲気
価値(value)とは例えば、すべきこと、すべきでないことです。親は価値に基づいて子育てをしています。その価値は今の生活の様式に基づくものもありますが、過去と未来を結ぶものがあります。それは、親から子、子から孫と面々と伝えられてきました。
また、価値の中には、個人によってほとんど差がないものもありますが、異なるものがあります。ですから、両親の意見が一致する場合と対立する場合があります。また、よく話題になったり強くこだわっている場合と、そうでもない場合などがあります。
雰囲気とは、価値をどのように子どもに教えるかの手段のことです。これを、三つに分けて整理します。
・独裁的:autocratic
人類がかなり長い間(ついこの間まで)伝統的にやってきた育児の方法です。家の中では大事なことを決定する人が決まっていました。例えば、大事なことはお父さん(家長のおじいちゃん)が決めるやり方です。例えば、結婚相手や仕事はふつう子どもの意志だけで決めることはできませんでした。でも、その時代は多くの子どもは文句を言いませんでしたが、現代の子どもはもう受け付けません。また、この独裁的育児は賞罰を表裏一体となって進められてきました。現代で問題となるのは、むしろこの手段としての賞罰です。アドラーの育児は賞も罰も使わない勇気づけに基づく民主的な育児を提唱し、進めてきました。
・民主的:democratic (話し合う育児)
アドラーが進めようとした民主的な育児です。
民主主義を多数決と合わせて考える向きがありますが、アドラーが進めようとしたのは、何かを決めるための民主主義ではありません。話し合うこと自体の力を大事にする、勇気づけに基づく育児です。詳しくはここをご覧ください。
・放任的:laissez-faire
これまで伝統的に使ってきた独裁的育児は、現代の社会に合わず衰退していきますが、かといってアドラーの考えた勇気づけに基づく民主的育児にはなりませんでした。
伝統的な育児は、今の世の中においては、方法は受け入れられないと思いますが、それでも教えようとする価値は明確に存在しました。
ところが、現代では価値が希薄になって目先のことに終始するだけに陥ってしまっています。大きな物語を失いました。例えば、「将来は世のため人のためになるように、しっかりと勉強するのだぞ。」なんて言う親はもういません。それに代わって、あなたがやりたいこと楽しくできれば幸せだと教えます。これまでの多くの価値は家庭から消えました。
したがって、子育てで何を教えようとしているのか親もよく分かってない状態になりました。人間の価値が希薄になると、判断基準も曖昧になりますので、価値が外部からどんどん侵入してくることになります。
家族や親の価値は、子どもの価値観に影響を及ぼします。その影響は、価値を前面に強く出している場合には、影響が強くなります。強くなるということが、実際に子どもにどのように影響をするかというと、そのことに子どもが「態度決定」することに影響が生まれます。
わかりやすく言うと、価値を強く出している場合は、子どもは「YES」または「NO」をはっきりと態度で示す確率が高まります。緩やかな場合には、それは緩やかになるでしょう。
雰囲気は、多くの場合子どもに遺伝します。(遺伝という言い方は変ですが、要するに、子どもも同じ方法で子育てをしてしまうということです。)