人間とは?
アドラーは、著書:Menschenkenntnis(Understanding Human Nature)の冒頭で次のように書いています。
”人間とは?”という問いは、文化が始まったころから人類が取り組んできた大きな課題を教えてくれるものです。しかし、人間を深く知る偉人が単発的に現れているに過ぎないため、このことは、充分に研究し尽くされていません。
そのため、人々は人間のことを知らないし、人間のことを分かってないのです。これは、私たちが、孤立した生活をしていることに関係しています。現代ほど孤立した時代はないでしょう。子どもの頃から私たちはお互いにあまりつながりをもっていません。家庭は私たちを孤立させています。私たちの全体的な生き方を見ても、周囲の人と親密な関係を作るのが難しくなっています。
他者との関係は、人間を知る能力を伸ばすのに絶対に必要なものです。人間を知ることと、他の人とつながることとは、お互いに関係しています。
理解の不足でおこることの最も深刻な結果は、周囲の人との付き合いや、共に生きていくことに失敗してしまうという事態です。人々がお互いをよく知らずにいるため、ふれ合わず、対話せず、手を取り合わない様子がよく見られる厳しい現実があります。これは、社会の広い範囲だけでなく、ごく近い家族の関係の中にも起こっています。
子どものことがよく分からない、親に理解してもらえないという訴えはよくあります。けれど、人が共生するにはお互いに理解することが欠かせないのです。それは、人に対するわれわれの態度は、すべて相手の理解に左右されるからです。
Alfred Adler、Understanding Human Nature 1924
カウンセリングでは、このことについて整理するとともに、具体的な取り組みについて話題に上がるでしょう。