Line ② -師匠のLine-
心理学の世界でも正統性を大切にしている学派があります。アドラー心理学派はそのうちの一つです。日本のアドラー心理学は、野田俊作(1948~2020)がシカゴ・アルフレッド・アドラー研究所のバーナード・シャルマンのもとに留学して帰国した1983年に始まります。野田先生は、アドラー心理学派には正統なラインがある。アドレリアン(アドラー心理学派の臨床家)は、師匠をたどれば、アルフレッド・アドラーにたどり着かなければならないんですよ。とよくおっしゃっていました。
私は若い時に、アドラー心理学を学ぶぞと決心したとき、まず、本や資料、文献を手に入れ読みあさりました。当時文部省がリードしていたロジャースの非指示療法に限界を感じていた私は、野田先生に本はとても感動したのを覚えています。講座もいろいろ聞きました、でも、野田先生の話は、頭では分かるのですが実際のカウンセリングにはなかなか活かせません。とある日、「あのね、アドラー心理学は本を読んでも学べないよ。」と言われ、勉強の仕方を大きく方向転換しました。自分でも本を読んでもダメだなと気付いていた時期でした。
それから、野田先生の新大阪の事務所に何年もかけて学びに行きました。直接の学びは本の文字とは違って、学びが生きているんです。分からないときは質問できるし、先生の体全体からニュアンスが伝わってくるし、何が根幹でどこが枝葉か等々、その頃は書籍から離れていたように思います。
芸人さんがお師匠さんから芸を盗むように学んだように思います。言葉もそのままいただいてしまったで、その頃のカウンセリングは関西弁でした(笑)。
野田先生はよく聴衆の面前でカウンセリングされました(アドラー先生もそうでした)ので、これには、機会がある毎に参加しました。また、インフォーマル(夜のお食事のこと)な学びもありました。先生の楽しい話は節々に哲学や思想の話が挟まれいて、昼間の講話の行間を埋めるように学びが広がり深化するのでした。研究したり学んでいる仲間と集い、意見交換する。そして、整理されていく。アドラー心理学を知らない人に話をして反応を聞く。そしてまた、師匠に合いに行く。そうこうしてアドラー心理学を体で学んでいったように思います。このように、アドラー心理学の専門家養成は伝承でしか伝わらない部分を持ち合わせているのです。
さて、アドラー心理学派の資格は、直接師匠から認定を受けるという形を取っています。名簿には認定者が併記されます。特に特徴的なのが実技試験で、野田先生と兄弟子の前で実際のカウンセリングをして、アドラー学派のカウンセリングができるようになっていれば合格というのもです。その場に立ち会った人全員の承知の上で認定されます。未だに残っている徒弟資格です。
そんなこだわり?のお陰で、日本アドラー心理学会の公認カウンセラーは正統性を担保しているのはよいのですが、全国で50人余りしか作っていかなかったのが野田先生らしいというか、問題だったなあと思う今日この頃です。(ちなみに、北陸地方は私一人)
また、野田先生は折衷的カウンセリング(アドラー心理学派や他派の都合の良いところを混ぜ合わした技法)をとても嫌っておいでした(合格しない)。折衷が悪いのではない、折衷をしたければアドラー心理学と言わないで、その人のやり方としてやればよい。アドラー心理学と言って、アドラー心理学とは違う方向にクライエントを誘導する人や本が多いとよく嘆いておいでました。
アドラー心理学の人間の精神を解釈する力(理論)とカウンセリングによって向かおうとしている方向(思想)による治癒力・癒やしの力は人類共有の財産です。アドラー心理学はアドラー心理学の構造があるからこそ、その強力な癒やしの力、治癒力、解決力あるのです。
「野田俊作→(師匠)→バーナード・シャルマン→(師匠)→ルドルフ・ドライカース→(師匠)→アルフレッド・アドラー」の正統Line のカウンセリングを体験してください。